葉っぱの上のプライバシー
庭に3mほどの低木があり、そこには4種のアリが生息している。
ときにそのアリの勢力図に、小さなクモが紛れ込んでくる。
先日ビール片手にその世界を観察していると、ついにアリとクモが対峙していた。
張り詰めた空気。一枚の葉の上で、体長5mmにも満たない2匹が睨み合っている。
最初に仕掛けたのはアリだった。互いに強靭な顎で相手の動きを封じる。まるで角をもつ獣のようだ。両者一歩も引かない。
手のひらほどの葉の上で、膠着状態がつづく。この闘いはどうなってしまうのか。そろそろビールがぬるくなったところで、私は気付いた。闘う両者の真横で、交尾をするテントウムシに。
なんだこいつらは。ほかにいくらでも葉はあるのに。なぜいま、ここで?
外野の人間がヤキモキしている間に、アリとクモの一騎打ちは決着がついていた。どうやら仲間の助けを得たアリが、単独のクモを蹴散らしたようだ。
いいところを見逃してしまった。しかもよりによってテントウムシの交尾…。なんて情けない。
しかし、他人のプライベートな空間をおかした私の行為そのものが、情けないものであると、缶ビールを洗いながら思うのであった。